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インタビュー
トップページ > 革の種類と知識 > エキゾチックレザーの魅力とインタビュー > 有限会社藤豊工業所
レザー&バッグ業界のエキスパートが聞く、
エキゾチックレザー企業最前線
タンナー編
エキゾチックレザーのタンナーに関するインタビュー
有限会社藤豊工業所 専務取締役 藤城耕一 × 伊藤邦彦
レザー業界、バッグ業界の第一線で活躍するエキスパートがエキゾチックレザーを手がける企業・事業者にインタビュー。レザーファン、ファッション好きのユーザー、そして、幅広いジャンルのビジネスパーソンの皆さまに、日本製エキゾチックレザーおよび、エキゾチックレザー製品の魅力をご紹介します。
第三弾は、有限会社藤豊工業所 専務取締役 藤城耕一さんに、大手百貨店独立後、皮革業界関連事業をはじめ幅広いカテゴリーでご活躍の伊藤邦彦さんがお話しを伺いました。
Q 日本製エキゾチックレザーの個性・特徴・魅力をタンナーの立場から、どう思われますか? 日本のタンナーと海外のタンナーとのクオリティの違いはありますか?
クオリティの違いとひとくちにいっても、日本では単純に「品質」の意味を指すような気がしますが、欧米で使われるクオリティという言葉には、「愛着がわく」とか「感性に響く」といった情緒面でのニュアンスも含みます。「革らしさ」をどうとらえるか? ということが大きく違うかもしれません。
国によっても、革の好みは微妙に違います。たとえば黒も、日本人は赤みがかった黒が好きですが、欧米では好まれないことも・・・。国内で鞣し染色した革のほうが日本人の好みに寄り添っていると思いますし、日本のタンナーだからこそ、お応えできる色合い・風合いがあると確信しています。
日本人の国民性として、皮革を工業製品のようにとらえるユーザーの皆さまも多く、百貨店やスペシャリティストアで販売する場合、クリアしなければならない条件です。一枚ごとにぶれのない革が求められていますが、国内のタンナー各社の長年の努力により、繊細且つ均質な革づくりを実現しています。
Q 四季のある国の革づくり、気温・水温の変化に対応できる卓越した技術について、お聞かせください。
各社ごとに土地柄や気温、水質などが違うので、一般論として言わせていただくと、伝統を受け継ぐ職人たちの努力の積み重ねで、こうした技術が培われたのだと思います。
弊社の場合、皮から革へ、鞣し、染色、仕上げの各工程で使用する薬剤を約550種類常備しております。調合は過去数十年のデータに基づき、品種、産地、サイズ、気候(気温、湿度)や革の状態、ニーズに合わせて都度コンマ単位でロットごとに調整します。
ミーリング(空打ち:ドラム内に革のみを入れて打ちほぐす工程で、大きな乾燥機のようなイメージ。染色後の乾燥工程によって革が突っ張った状態からの柔軟化を目的として行います)では、回転の時間と速度そして加温と加湿は、革の状態や用途、気候等を見極めて調整します。
Q エキゾチックレザーを手がけるタンナーとして考える近い未来の革づくりついてお聞かせください。
「SDGs」への高い意識に対応することもひとつの方向性だと思います。「SDGs」17の目標のなかでも、最初に掲げられた「貧困をなくそう」というテーマに対し、エキゾチックレザーは産業として貢献しております。
クロコダイルの養殖を手がける生産地には、発展途上国も含まれます。産業自体が現地の雇用促進につながり、子どもたちの教育機会を増やす一助にもなっているのではないでしょうか。そのような社会貢献を、エキゾチックレザーを愛する富裕層ユーザーの皆さまにご理解いただき、産業としての継続とさらなる発展を目指したいと考えております。
同じく「つくる責任つかう責任」についても取り組んでおります。愛着をもてる革をつくること。手触りや発色、艶感などのテクスチャーの良さにより、長く使いたいという思いを喚起し、そして、実際に長く使っても劣化しづらい堅ろう性に優れた革をつくることがタンナーの使命だと考えています。それが、ほんとうの「エコ」への貢献であり、「エシカル」ではないかと。
弊社では、外部委託していたプロセスを改め、革の選別をはじめ内製率の向上に注力し、そのことをクオリティ管理につなげています。良い素材、製品をお届けすることで長く愛着していただけるよう、日々改良を目指しております。
Q タンニン鞣しシリーズなど海外での反応と、それにより感じた気づきは?
2019年、「プルミエール・ヴィジョン パリ」に日本のエキゾチック・タンナーで初めてブースを構え、世界中のメゾンをお迎えしました。弊社の植物タンニン鞣しの草木染めが人気を博し、その場で老舗革製品ブランドやビッグメゾンから注文をいただきました。
天然の薬剤は非常に高価で、革の単価が上がってしまったことが商談のネックになるリスクも案じていたのですが、「ベジタブルでこのクオリティならもっと高価でもいい」というポジティブな反応が多く、「エコ」という要素は、世界規模のブランディングを要される欧米のブランドにとって、いまや重要な付加価値なのだと感じました。
藤豊工業所が出展した「プルミエール・ヴィジョン パリ」 「プルミエール・ヴィジョン パリ」出展の様子(2019年)
Q さまざまなコラボ企画などを通して、御社が変化したことはありますか?
2020年7月、世界的なプレミアム・ライフスタイル・モーターサイクルブランド正規販売店「トライアンフ茅ヶ崎」グランドオープンを祝い、特別なカスタムマシン「TRIUMPH x ZELE-PARIS x FUJITOYO THRUXTON R “WANI”」を発表しました。日本で鞣製仕上げした、全長4m級のポロサスクロコダイルの頭から尻尾までの革を張り込んだ、世界にただ一台の希少なマシンです。
重要無形文化財総合指定保持者 能楽師 大倉流大鼓方であり、バイカーとしても著名な大倉正之助先生による着想で製作。クロコダイルのオーダーメイドを中心に手がける「ZELE-PARIS」と、弊社とのコラボレーションにより、芸術品のようなマシンが実現しました。
世界的バイクブランド「トライアンフ」とコラボしたバイク TRIUMPH x ZELE-PARIS x FUJITOYO THRUXTON R “WANI”
一流の方々と企画を通して触れ合う機会を得て、完成までのやりとりそのものはもちろん、できあがったものを見て、自分たちのつくる革の価値を再確認できました。それがさらにタンナーとしてのやりがいにつながっていると思います。この案件以降、バッグ、財布、靴といった従来の革製品の垣根をこえた、さまざまなコラボレーションや、ご依頼・ご相談をいただくことが増えました。
そのひとつとして、伝統的な染色技法「黄櫨染(こうろぜん)」をクロコダイルレザーで実現しました。現代の「黄櫨染」の第一人者、奥田祐斎さんとのコラボレーションにより表現し、製品化とともにイベントとしてお披露目。大変ご好評いただきました。新しい生活様式が浸透するいま、ファッションだけでない、ライフスタイルの提案、創造への役割を実感しております。
伝統的な染色技法「黄櫨染(こうろぜん)」とのコラボアイテム 「黄櫨染(こうろぜん)」とのコラボレーションアイテム
インタビューを終えて
「日本の革には日本らしい良さや特徴がある」。藤城専務のインタビューでは終始その思いが伝わってきました。欧州や諸外国に学び、研鑽する時代があった。でもいまは違う。
そこにあるのは、藤豊工業所だからこそできる革づくりの追求。自らの強みを発揮するステージにたどり着いたのだ。その視点に立ったとき、いま何を課題とし、何と向き合い、どこを目指すのかがはっきりしてくる・・・。

藤城専務の言葉を裏付ける、さまざまな新しい取り組みへのチャレンジ。日本には四季や自然そして独自の風土がある。その風土で培われた、つくり手の繊細で豊かな感性がある。「日本人にしかできない価値を創出し、世界基準を満たすクオリティが評価されている」という確かな自信、そして希望を感じることができた訪問でした。
有限会社藤豊工業所 藤城 耕一専務
有限会社藤豊工業所 藤城 耕一専務
〒131-0042 東京都墨田区東墨田3-17-13

公式サイト:https://fujitoyo.co.jp/
インスタグラム:https://www.instagram.com/fujitoyo_leather
インタビュー&ライティング
インタビュアー伊藤 邦彦
伊藤 邦彦
株式会社伊勢丹に入社。「イセタンメンズ」バイヤー、婦人服バイヤー、上海駐在、パリ駐在などを歴任。伊勢丹メンズ創成期の欧州ファクトリー&クリエイターの発掘、「ゴヤール」、「サロン・デュ・ショコラ」日本導入などに携わる。独立後は、皮革業界関連事業をはじめ、繊維や和装まで幅広いカテゴリーと関わっている。
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